2008年04月10日
パンズラビリンス
なぜかファンタジーを見たい気分になって、ヴィデオレンタルでなんとなく手に取った「パンズ・ラビリンス」を借りてきて、見た。
事前にどんな映画かも、評判も、映画の名前すら知らず、ファンタジーというだけで借りてきて見たのだが、いい映画だった。
暇なとき、いろんなDVDを借りてきて見るのだが、ほとんどの映画は、途中でいやになって見るのをやめたり、寝てしまったりして、結局しっかり見もせずに返してしまうことが多い。
ところが、この映画は2度も見てしまった。
スペインの内戦時代の厳しい時代背景の中で、無垢な心を持った少女が、夢の世界にしか逃道を見出せなかった悲しい物語だ。
そして、この少女がこれから生まれてくるはずの、母親のおなかの中の子供に、「外の世界は平和じゃないわ。」と語りかける姿が心に響く。
今でこそ、スペインも民主化されて先進諸国の仲間入りをしているが、ほんの30年ほど前まで、フランコの独裁政権が続いていた。独裁国家はあちこちにあった(ある)が、後進国ではなく、一時は陽の沈まない世界帝国を築き、欧州の中にあって文化水準も高かった国なのに、独裁政権の下、鎖国状態に置かれていた。この国の人たちにとっては、フランコ時代は今でも大きな心の傷になっているのだろう。
しかも、その独裁政権からの民主化は、戦いによって勝ちとられたものではなく、フランコという独裁者が死ぬことによって、初めて出来たのである。
この映画は、ファンタジーとはいいながら、想像を超えるような奇奇怪怪な世界や、大げさで派手な怪物も出てこないし、壮大なスペクタクルもない。いわゆるファンタジーを期待して見るなら、落胆するだろう。
しかし、さすが、ピカソやダリ、あるいはガウディなどの偉大な芸術家を生み出した国の監督が作った映画、地味で暗いようなシーンばかりだが、美しさを感じる、
そして、主人公の子役の子が、美しい。もちろん演技も上手だ。しかも子供ながらに、気品ある知性を感じさせる子だ。
きっと遠からず大女優になるだろう。
後知恵で(映画を見てから、ネットなどを調べて)知ったが、この子は日本にも来たらいい。
残酷なシーンなどもあって、目を背けたいところもあったが、見終わった時の気分はさわやかだった。
エンドロールの音楽もいい。この映画の公式ホームページを見ると、バックにこの音楽が流れる。